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2011.11.23 変態ヒロイン羞恥淫欲晒し  # 3-2 『予感』
変態ヒロイン羞恥淫欲晒し 門馬小絵の場合
短編 # 3-2 『予感』


巫女風の白い退魔装束に身を包んだ女性が小絵の目の前に立っている。
懐かしくて暖かくも、悲しい記憶。

その女性が振り返って叫ぶ。
「逃げて、小絵。逃げなさいっ!」

女性の前方には、白衣をまとった青年の姿。ただし、身体の一部から異形の触手が見え隠れし、その顔はうっすらと邪悪な笑みを浮かべていた。幼い小絵にも、それが人間ではない事はひと目で分かった。忌むべき存在。禍々しく、邪悪で、圧倒的な恐怖。
「お母さん!」
「私は…大丈夫。絶対に負けない。だから小絵、アナタは逃げて!」
「お母さん…」
「すぐに戻るから、ね。小絵」
「待ってる。お母さん私待ってるから」
触手を繰り出す男との攻防が始まる。
必死で駆け出す小絵。


お母さんは、すぐに戻ってくる。

しかし…その後いつまで経っても、母親が戻ってくることはなかった。
由緒正しき退魔巫女一族である門馬家は半妖の襲撃を受け、焼き払われ小絵以外の人間はすべて亡き者とされた。
小絵はあれからずっと、母親を待ち続け、今でも待ち望んでいる。

「早苗お母さん…」
幼い小絵と手を繋いでいる、母親の唯一の写真。逃げるときに持ちだした、唯一の思い出の品でもある。誰よりも気高く、誰よりも優しかった母。その写真を見るたび、小絵は戦いの決意を強くした。絶対に…負けない。あの男…白衣の男を倒す。それまでは。

近頃、小絵はよくあの時の夢を見るようになっていた。
毎夜のように繰り返し夢を見ては、涙を流しながら目を覚ます。


門馬一族が襲撃を受けてからしばらく立った頃、門馬早苗の縁類で友人でもあった楠響子が、小絵を引き取り、退魔の力を極限まで引き出して高める装置としてジャスティレイファーを開発。組織化し整備して育て上げた。

小絵はすぐにその素質と才能を見抜かれ、半妖を倒すための訓練を受けたが、何よりも最強の力を引き出すことにいちばん寄与したのは、本人の凄まじいばかりの半妖を倒したいという気持ちと、母への想いであった。真っ直ぐで一途な心が、半妖を倒すという一点に全てを集中させたことで、劇的にその力を伸ばし開花させたのだった。

幼い頃から修行と戦いの毎日を送っていたため、多少世間知らずに育ったきらいはあったが、その若さにして、小絵は経験と実力を兼ね備えた最強のジャスティレイファーとなった。

近頃やたら頻繁に繰り返し見る夢--。
母親と、白衣の青年。
「逃げて、小絵。逃げなさいっ!」
「お母さんっ!」
小絵は、あの男との出会いが近いであろうことを、なんとなく予感めいた想いとして感じ取っていた。
絶対に…仇を果たす。
自分を庇い、逃がしてくれたお母さんの…半妖に苦しめられた全ての人たちの、仇を。


同じ頃。
ジャスティレイファーたちのもとに、ある報告が集まっていた。
女性が攫われる事件が頻発し、強力な人型の半妖がそれに関与している。

すでに幾人かの隊員が接触していたが、あまりの力の差に全く敵わず捕らえられ、たった数人が逃げ帰るのが精一杯であった。
討伐にはジャスティレイファーの力、それも強いジャスティレイファーの力が必要。本部でもそう結論付けられた。水神音羽はあの事件以降まともに戦える状態ではないし、新堂佐緒里は近頃出動回数も減り、頼むには不安があった。

現在、支部の司令を務める楠響子は、その役割を門馬小絵に一任した。
「小絵ちゃん。ひょっとしたら…」
「うん、分かってます。その敵とやらは…あの男、お母さんの仇…かもしれない」
「充分に気をつけて」
「絶対に…倒します。お母さんの仇」


また月が煌々と大きく明るい夜。
最強のジャスティレイファー、門馬小絵の運命が、大きく動き始めようとしていた。


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